`73年発表アルバム。「マイ・ラヴ」「ビッグ・バーン・ベッド」「シングル・ビジョン」等を含む全13曲収録。 (C)RS
ロックン・ロールの歴史をどんなにさかのぼっても、本作『Red Rose Speedway』のようなアルバムは見つからないだろう。傑作とは言えないが、怪作である。ウイングスのアルバムなのに、完全にポール・マッカートニーの独壇場。ツアーのリハーサルをやろうとしたウイングスの面々が、ポールの巨大な影に圧倒されて仕事を放棄してしまい、彼を野放しにしてしまった場面をつい想像してしまうほどだ。
バンドがそうなるのも無理はない。バラの花をくわえたポールのジャケット写真を見れば分かるとおり、本作はポール・マッカートニーについてのアルバムだ。もう少し具体的に言えば、こぢんまりとした佳曲を「Hey Jude」の規模にふくらませるというポールの70年代の得意技に焦点を当てた作品なのである。もちろん、スケール・アップさえすれば「Hey Jude」のような名曲に仕上がるとは限らないのだが、ポールはそのリスクを恐れなかった。あるいは、リスクの存在に気づいていなかったのかもしれない。
・ amazon MP3 : Red Rose Speedway
最大の聴きどころは激甘チューンの「My Love」。マッカートニー夫人の性的魅力をテーマにした、柔らかな雰囲気を持つ陶酔的なバラードだ。アルバムの残りを占めるのは、華麗にプロデュースされた気だるいロック。時に甘く、時にウンザリさせられはするが、ポールらしさは全編にあふれている。一体ポールは何をやりたかったのか? それを考えてみたいなら一聴の価値ありだ。(Taylor Parkes, Amazon.co.uk)
・ iTunes USA : Red Rose Speedway – Paul McCartney & Wings
・ iTunes Japan : Red Rose Speedway – Paul McCartney & Wings